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北京「危険家屋リスト」の住宅に住む人々とは―スモッグの下に息づく下町情緒

8月8日、中国の新聞が「北京西城『危険家屋リスト』、木造の老朽化した家にいまだに賃貸で人が住んでいる」と報じた。北京にある木造の老朽化した家屋とはいったいどのようなものなのだろうか。

▼北京西城区の胡同(フートン)の様子

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北京西城区に存在する2万7千件の危険家屋

今回の報道では、北京の西城という場所で木造の老朽化した家屋に人が住んでいるという。
いうまでもないが北京は中国の首都で、中国国内でも北寄りの乾燥地帯にある中国有数の大都市だ。最近は大気汚染が深刻で、毎年冬場になるとたびたび前が見えないほどのスモッグが街中に広がる。PM2.5による健康被害も懸念されていることは日本でもよくニュースで報道されている。

▼深刻なスモッグに覆われ、まるで未来都市のような幻想的な風景となった北京

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日本からすればそんな場所に人が住んでいるのが不思議に思えるくらいだ。しかし本来の北京と言う町は、下町情緒にあふれた路地に北京っ子が住む、古くからの生活の面影を残す人々の息づかいにあふれた街なのだ。

▼北京西城区にある胡同の風景

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その北京の下町情緒を代表するのが胡同(フートン)。胡同とは北京の古い町並みの中に無数に張り巡らされた路地のこと。北京では表通りから一歩入れば、いたるところでその胡同の様子を見ることができる。胡同の両脇には「四合院」と呼ばれる伝統的な中庭を持つ平屋家屋が建ち並んでいる。「四合院」の典型的な配置は中庭を囲んで4つの建物が囲む形で、そのために「四合院」という名前で呼ばれており、日本でも知られている。

▼胡同には「四合院」と呼ばれる伝統家屋が建ち並んでいる

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一つの「四合院」にはたいてい何家族もの人々が集まって暮らしている。路地に出れば古い店が並び、物売りが通り過ぎる。新しいカフェや服を売る店もあり、古いものと新しいものが渾然一体となって、北京にしかない魅力的な庶民の生活の姿を作り出している。

▼今も庶民の生活が息づく北京の胡同

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今回の報道の中に出てきた北京の「西城」とは、西城区のことで、北京の中心地域の西側に位置する。西城区は北京金融街や西単など、中国有数の発展を遂げた地域だが。同時に胡同の下町が多く残る地域でもある。その西城区に木造の老朽化した家屋に住む人がいるという。では今回の新聞報道の記事の内容を見てみよう。

8月8日。北京では、先日、西城区の建築物管理局は、13の通りに面した2万7千件の危険家屋のリストを発表した。これにより住民が間違って賃貸で入居してしまわないように注意を促す。記者が現場を訪問調査したところ、一部の家屋は破損がひどいことが分かったが、いまだに住民が賃貸で居住している家屋がある状態だという。
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西長安街(という名前の通り)の「危険家屋リスト」上にある大秤鉤胡同(という名前のフートン)の2番地、7番地、12番地にある「四合院」は老朽化が激しく、一部の家屋は「家屋全体の老朽化」に至っているものもある。記者が昨日訪問調査を行ったところ、2番地と7番地の「四合院」では、大部分の木造建築素材が老朽化して腐っているのを発見した。

西城区の胡同内の建物は、建築物の多くが老朽化し、木造部分が腐ってきているのだという。その写真が紹介されていた。

▼これが腐っているという木造の素材

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▼胡同の中にある建物は、レンガと木材を組み合わせたものが多い

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▼天井部分に少し痛みがあるようだ

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▼壁面に少し剥落している様子が見える

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▼「四合院」の内部の物干し場所の様子

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記事では腐っていると書かれているが写真を見る限りは、長い時間がたって痩せていたり、少しカビなどの跡が見えるだけのように見える。

木造を「遅れてる」と感じる市民と早く再開発したい政府

本来木材は火事でもない限りそう簡単に崩壊したりはしない。写真を見る限りは、「危険家屋」に住んでいるというのは言い過ぎであるように感じる。ただ古びているだけで、地震などの大きな災害が来ない限りは、まだまだ住めそうな状態である。木材は古くなって少しやせたとしても、強度にさほど影響が出ることはない。ではなぜ今回は中国のメディアで「危険家屋」だと報道されているのだろうか。
その理由は2つある。
1つ目は、木造素材は「安物で壊れやすい、遅れてる」という中国人の意識だ。
中国の人々は一般的に、木造よりもレンガ・コンクリート造のほうが丈夫であり、上等であると考えている。中国の一般的な認識では木造に住んでいるのは農村のその中でもさらに金銭的に余裕のない人間が住むようなものか、もしくは都市部でも戦前に作られた木造が使われた建物に再建・改修しないまま住んでいるようなものだというイメージがある。そのため「木造に住んでるなんてかわいそうね」というのが普通の感覚なのだ。そのため、木造=壊れやすい不安全なものという前提で語られることが多い。いわば、木造は「遅れてる」という感覚なのだ。木造の丈夫さを知る日本人とは異なる感覚だと言える。
2つ目は、古い建物をどんどん壊して再開発し、現代的な都市に作り変えたいという政府の意向だ。
特に北京は首都でもあり、再開発の勢いはすさまじく、古い路地は次々とつぶされ、ビル群に作り変えられている。今回も、木造まじりの建築を「危険家屋」と決めつけることで、このような下町は時代遅れで危険なものであり、作り変えなければならないという再開発の「理由付け」をするための下準備をしていると言える。当局からそのような発表がある限り、中国のメディアもある程度追従した論調とならざるを得ない。

今回の記事は小さな報道にすぎないが、こんなところからでも、少し背景を探れば中国社会の様々な側面が見えてくる。北京では、この10年でかつての胡同は次々と再開発され、下町情緒は次々と姿を消している。急成長する国の首都として仕方のないことなのかもしれないが、できる限り残していってほしいと願うばかりだ。(了)

 

 

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【関連地図】

北京市西城区什刹海公園・恭王府

  • アクセス:地下鉄6号線「北海北駅」下車、徒歩10分
  • 什刹海公園(別名:后海)と恭王府の近辺は北京西城区でも古い胡同が多く残る地域。

 

 

【記事・翻訳:高晋】
Via/Pic:NetEase

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参照記事

北京西城"清单危房" 木质朽烂仍有人租住
8月8日,北京,近日西城区房管局公布13个街道共2万7千多间危房,提醒居民不要误租。记者现场探访,发现部分房屋破损严重,有的房屋仍存在出租现象。
近日,西城区房管局在网上挂出《西城区2016年危房清单》,公布了包括展览路街道、白纸坊街道等13个街道共2万7千多间危房,提醒居民租房前比对清单,不要误租危房。据了解,《西城区2016年危房清单》公布在“西城区房屋租赁服务管理平台”,里面详细介绍了房屋的地址、朝向、屋号、间数、破损程度等情况。西城区房管局提醒市民,今年主汛期后,平房时有险情发生。建议市民在租房前,先在清单中进行比对,以免租到危房发生危险。同时,区房管局也向辖区内房地产中介机构发出通知,禁止中介机构代理、出租严重破损及危险房屋。
在北京,危房建册工作各区都在做。昨日,北京市住建委房屋安全设备处相关负责人向新京报记者介绍,根据今年的排查统计,北京全市共有298.73万平方米的严重破损房屋,有10.66万平方米疑似危险房屋。“这些数据是由非专业鉴定机构上报给区房管部门,然后汇总到市里,我们会在汛期开始前安排专业机构现场鉴定是否为危房。目前,3月汇总上来的疑似危险房屋中,一部分已经过专业鉴定后被排除,还有很大一部分已经进行了修缮并解危。”据了解,近年来,北京每年都会对全市的房屋安全情况进行管理普查,今年的调查统计,是从去年9月下旬开始部署,11月至今年2月展开各区的房屋普查,随后汇总普查数据,形成全市的材料。该负责人介绍,东城、西城这样的老城区由于具有文物保护性质的房屋较多,不确定性比较大,为了防止汛期发生危险,东城、西城每年都要投入几千万资金用于维修管理。
在西长安街危破房清册上,大秤钩胡同2号院、7号院及16号院破损范围颇大,有的房屋甚至为“全房朽”。记者昨日探访了2号院、7号院发现,大部分木质建筑材料腐朽,但仍有居民租住其中。昨日,记者来到大秤钩胡同2号院。一进院落门道,就能看见屋顶疑似被烟火熏得乌黑,墙壁上贴着宽带等广告,墙面斑驳,用手轻轻一碰就有墙皮碎落。门道左侧有一间房间,嵌着玻璃的旧木门外顶着一根长木条。门上贴着一张残缺的危险自住房通知单,要求户主在限定期内修缮房屋,或迁出腾空停止使用。通知单落款为西长安街房管所,落款时间为2006年6月,并于2012年7月再次落款。据观察,这间房已无人居住。图为现场。
据了解,一直以来都存在个别房屋所有人将破损较严重的房屋向外出租的现象。市住建委房屋安全设备处相关负责人表示,危房在未进行安全改造之前,是禁止使用的,每年市住建委都会组织各区县向街道社区发布通知,提示基层行政单位和房主落实责任。明知是危房还对外出租,就违反了房屋安全管理办法的相关规定,该负责人表示:“如果发现有人出租的房屋有安全隐患,可以就近向街道社区反映。社区工作人员将联合房屋管理部门到现场鉴定,一旦确定为危房,出租人将承担责任。”

北京西城"清单危房" 木质朽烂仍有人租住_网易新闻